2025年09月16日
「理学療法士として整骨院を開業できるの?」
そう疑問に思う方は多いのではないでしょうか。実は、理学療法士には法律上の「開業権」がなく、そのまま整骨院を立ち上げることはできません。整骨院は柔道整復師が開業できる施術所であり、理学療法士とは制度上の立場が大きく異なります。
本記事では、整骨院と理学療法士の関係、柔道整復師との違い、もし独立を目指すならどんな方法があるのかをわかりやすく解説します。
理学療法士は整骨院開業を開業できない
結論から言うと、理学療法士は整骨院を開業することはできません。その理由は法律で定められている「業務範囲」と「開業権」にあります。
理学療法士は「理学療法士及び作業療法士法」に基づく国家資格であり、医師の指示のもとで理学療法(運動療法や物理療法など)を提供する専門職です。
そのため、医師の指示なしに独自に施術を行ったり、理学療法を業として開業することは法律上認められていません。
整骨院は柔道整復師が運営する施術所です。柔道整復師は「柔道整復師法」に基づき、骨折や脱臼、捻挫などに対して自らの判断で施術を行う権限があり、独立開業権が与えられています。
つまり、
- 理学療法士…医師の指示の下で働く専門職(開業権なし)
- 柔道整復師…開業して施術所を運営できる国家資格
という違いがあるため、理学療法士が「整骨院」という名称で開業することはできないのです。
ただし、理学療法士の知識や経験を活かし、整体院やトレーニングジム、リハビリをベースにした自費サービスを提供する形での独立は可能です。
ここを誤解して「整骨院を開業できる」と考える人が多いので、まずはこの前提を正しく理解しておきましょう。
「整骨院を開業するには柔道整復師の国家資格が必要です。詳しくは整骨院開業に必要な資格について解説した記事をご覧ください。」
整骨院と理学療法士の業務範囲・制度の違い
理学療法士と柔道整復師は、いずれも身体機能の回復に関わる専門職ですが、法律上の立場や開業の可否には大きな違いがあります。
保険医療機関と整骨院の違い
- 保険医療機関(病院・クリニック):医師が在籍し、健康保険を利用して診察・リハビリが可能。理学療法士は医師の指示に基づき業務を行う。
- 整骨院:柔道整復師が施術を行う場で、医師は在籍していない。健康保険が使えるのは骨折・脱臼・捻挫・打撲などの急性外傷に限られる。
理学療法士と柔道整復師の違い(比較表)
項目 |
理学療法士 |
柔道整復師 |
資格の位置づけ |
国家資格(理学療法士及び作業療法士法) |
国家資格(柔道整復師法) |
主な勤務先 |
病院、クリニック、介護施設 |
整骨院、自らの施術所 |
医師の指示 |
必要(医師の指示の下で理学療法を実施) |
原則不要(一定範囲で独自判断で施術可能) |
開業権 |
なし |
あり(整骨院を開業できる) |
健康保険 |
医師の指示に基づき病院などで適用 |
骨折・脱臼・捻挫・打撲など急性外傷のみ適用 |
主な業務 |
運動療法、物理療法、日常動作訓練 |
整復法、固定法、後療法など |
このように、理学療法士は「医師の指示を受けて動作能力の回復を支援する職種」、柔道整復師は「独立して整骨院を開業できる施術者」という大きな違いがあります。
資格や施術範囲の違いを整理するためには、整骨院と整体院の違いも参考になります。
理学療法士が整骨院で担えること・担えないこと
整骨院で理学療法士が働く場合、資格を直接活かした理学療法を提供することはできません。法律上の制約があるため、整骨院で理学療法士が担える業務と担えない業務を整理しておきましょう。
担えること
理学療法士は医療知識や運動学に精通しているため、整骨院でも以下のような業務に携わることは可能です。
- 受付や患者対応などのサポート業務
- トレーニングやストレッチ指導などの運動アドバイス(自費サービスとして)
- 健康維持や姿勢改善を目的とした生活指導
- 自費リハビリやコンディショニング分野での施術サポート
これらは「理学療法」という枠を超えて、一般的なフィットネスやボディケアの範囲に入るため、整骨院内でも違法性なく行うことができます。
担えないこと
一方で、理学療法士が整骨院で資格を用いて理学療法を行うことはできません。
- 医師の指示なしに理学療法(運動療法や物理療法)を提供すること
- 健康保険を用いた治療リハビリを整骨院で行うこと
- 「理学療法士が施術します」と広告して患者を集めること
これらは法律で禁止されており、違反すると行政処分の対象となる可能性があります。
理学療法士が整体やボディケアを行うケースもありますが、あくまで「理学療法」とは区別して提供する必要があります。資格を前面に出して医療行為と誤解される表現をすることは避けましょう。
理学療法士が開業を目指す場合の選択肢
理学療法士は法律上「開業権」を持たないため、整骨院を開業することはできません。
しかし、資格や経験を活かして、別の形で独立する道はいくつか存在します。
自費整体やパーソナルトレーニング事業
理学療法士として培った身体の知識を活かし、自費の整体院やパーソナルトレーニングジムを運営するケースがあります。
例えば、姿勢改善、運動指導、ストレッチなどは「理学療法」とは異なる民間サービスとして提供可能です。
介護領域での事業(デイサービスなど)
理学療法士の専門性を活かしやすいのが介護分野です。
特にデイサービスでは「機能訓練指導員」としてのスキルが評価され、経営者として施設を運営する例もあります。
要介護高齢者を対象にしたリハビリ特化型デイサービスは、理学療法士の知識を強みとしてアピールできます。
もし、資金調達を考えているなら、整骨院開業に活用できる助成金・補助金も参考にしてください。また、整骨院開業の流れも気になる人はチェックしてみてください。
理学療法士が開業できるのは整体院やパーソナルジムトレーニング
理学療法士は法律上、整骨院を開業することはできません。
ただし「整体院」や「パーソナルトレーニングジム」など、自費サービスで独立することは可能です。
そのときに気をつけたいのが、お金の流れとリスクです。
どれくらい稼げる?
たとえば整体院として独立した場合のシミュレーションです。
- 1回の料金:5,000円
- 1日あたりの施術人数:5人
- 月20日営業とすると…
月の売上は「約50万円」、年にすると「約600万円」になります。
ただし、ここから家賃や光熱費、機器の購入費、人を雇うなら人件費などが引かれます。
実際に手元に残るのは、思っているより少ないことも多いです。
初期費用もかかる
開業にはテナント契約や内装工事、ベッドや機器の購入で数百万円かかることもあります。
さらに、開業してすぐにお客さんが安定して来るわけではないので、数ヶ月は赤字覚悟で資金を準備しておく必要があります。
助成金や補助金を活用できる場合も
整骨院としての制度は使えませんが、介護や中小企業向けの制度でサポートが受けられるケースもあります。
特にデイサービスなどを始めるときには、地域によって補助金があることもあります。
失敗しやすいパターン
- 「資格があるから自然とお客さんが来る」と思って準備を怠る
- 値段に見合ったサービスを提供できずリピートにつながらない
- 初期投資をかけすぎて資金が尽きる
理学療法士としての専門性は強みですが、経営は別のスキルです。
開業を考えるときは「施術者」と「経営者」、両方の目線を持つことが大切です。
整骨院の開業を考えている人向けの記事ですが、整骨院開業は儲からない?の記事や、整骨院の年収についてまとめた記事も参考になります。
整骨院の開業相談ならジョイパルにご相談
理学療法士は法律上、整骨院をそのまま開業することはできません。
もし独立を目指すなら、整体院やトレーニングジムなど、自費サービスでのスタートを考える必要があります。
一方で、整骨院を開業するのは柔道整復師の資格がある人です。
しかも資格だけでなく、実務経験や研修などの条件もそろえなければなりません。
開業には「お金」「場所」「集客」「経営スキル」など、悩むことがたくさんあります。
そんなときは、整骨院の開業支援を行っているジョイパルに相談してみてください。
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