2025年07月15日
これから整骨院を開業しようとしているあなたにとって、領収書の扱いは意外と見落としがちなポイントです。
患者さんから「領収書をください」と言われたときに慌てないよう、開院前にしっかり流れをつかんでおきましょう。
整骨院では、保険施術でも自費施術でも、患者さんに支払いの証明として領収書を発行することが義務づけられています。
病院と違ってレシートタイプの領収書でOKなケースもありますが、記載漏れや金額の不一致があるとトラブルの原因になるので要注意です。
また、領収書は患者さんが医療費控除を受ける際に欠かせない書類です。
確定申告のときに「整骨院でかかった費用」をまとめて申請できるよう、必ず正しい書式で渡せる体制を整えておきましょう。
整骨院は医療機関ではありませんが、健康保険を扱う窓口としての役割もあります。
保険請求の仕組みや必要な手続きについては、こちらの記事も参考にしてくださいね。
→ 整骨院は医療機関ではない?健康保険との関係や開業前に知っておきたいこと
整骨院で領収書発行が義務化された背景
整骨院で領収書を出すルールができたのは平成22年9月からです。
このとき、施術費用や療養費の一部負担金を徴収した場合には、保険施術でも自費施術でも必ず領収書を発行することが法律で決まりました。
背景には、患者さんが施術内容や金額をしっかり確認できるようにすることと、不正請求を防ぐという目的があります。
それまでは明確なルールがなかったので、院によっては領収書が出なかったり、必要な情報が抜けていたりといった問題も見られました。
特に保険適用分と自費分を区別せずにまとめて請求してしまうと、保険者からの指摘やトラブルにつながるリスクが高まります。
平成22年の改正で、透明性を高めることで患者さんと施術側の信頼関係を築くことが期待されたわけです。
参考:全国柔整鍼灸協同組合
最近ではキャッシュレス決済も増えていますが、現金と同じように領収書発行が求められますし、明細書発行の義務化も一部拡大しています。
整骨院の領収書に必要な記載項目
整骨院の領収書には、以下の項目を必ず記載しましょう。患者さんや保険者への説明責任を果たすためにも漏れがないように注意が必要です。
- 患者氏名
- 領収日(支払日)
-
保険施術の合計金額
-
一部負担金の金額の内訳
-
保険外施術の金額の内訳
-
一部負担金と保険外施術(自費施術)の合計金額(患者支払い金額)
-
施術所の名前と住所
-
施術管理者の名前と印鑑
特に保険施術と自費施術をきちんと分けて記載することで、不正請求のリスクを減らせます。印鑑は院長印でなくてもかまいませんが、施術管理者の印鑑を必ず用意してくださいね。
また、地方厚生(支)局の「柔道整復師の施術に係る療養費について(通知)の一部改正について」では、以下のように記載されています。
(1)領収証の交付について
柔道整復師の施術に係る療養費の一部負担金等の費用の支払いを受けるときは、正当な理由がない限り、領収証を無償で交付しなければならないこと。
交付が義務付けられる領収証は、保険分合計及び一部負担金並びに保険外の金額の内訳が分かるものとし、別紙様式1を標準とする。
整骨院の領収書作成方法と注意点
領収書は患者さんが来院した都度発行するのが基本です。しかし、前月まとめや途中で再発行するような運用は原則NGなので注意しましょう。
令和2年6月1日に料金改定が行われたため、新料金にあわせて計算方法を更新してください。また、保険施術の算定基準も改定されていますので、レセコンや計算シートに正しい単価が反映されているか必ず確認しましょう。
1か月分まとめて領収書を発行したい場合は、患者さんの要望に応じる形で同意を得たうえ、施術日ごとの金額を明細に記載することが望ましいです。院の都合でまとめて発行するとトラブルにつながるため、まとめ発行は患者さんの依頼があったときのみ行いましょう。レシートタイプの領収書でも厚生労働省が定める必要記載事項を網羅していれば問題ありません。
あらかじめ自作のテンプレートを用意し、必要事項がもれなく印字できるように設定しておくと安心です。
整骨院での明細書義務化とそのポイント
整骨院では、2022年10月から一定の条件を満たす施術所で、領収書と併せて明細書の発行も義務づけられました。明細書とは、保険施術の算定内容を詳しく記載する書類で、患者さんが受けた初診料や再診料、施術料などの内訳を確認できるものです。
明細書発行の義務化対象となる条件は主に次の2点です。
- レセプトコンピュータ(レセコン)に明細書発行機能がある
- 常勤職員が3名以上在籍している
(2)明細書の交付について
① 明細書発行機能が付与されているレセプトコンピュータを使用している施術所であって、常勤職員が3人以上である施術所
ア 明細書の無償交付
令和4年 10 月1日以降の施術分から、明細書発行機能が付与されているレセプトコンピュータを使用している施術所であって、常勤職員が3人以上である施術所においては、患者から柔道整復師の施術に係る療養費の一部負担金等の費用の支払いを受けるときは、正当な理由がない限り、明細書を無償で交付しなければならないこ
と。
なお、明細書の様式は、一部負担金等の費用の支払いを受けるごとに交付する場合は別紙様式2又は別紙様式3を標準とし、患者の求めに応じて1ヶ月単位でまとめて交付する場合は別紙様式4を標準とするものである。
領収書兼明細書として1枚で発行する場合は、領収書の必要項目に加えて、以下の施術料の内訳を明示しましょう。
- 初診料/再診料
- 初検査時相談支援料
- 施術情報提供料
- 往療料
- 施術料(整復・固定など)
これらをきちんと記載しておくことで、患者さんへの説明責任を果たすとともに、不正請求を防止できます。
以下は、地方厚生(支)局のPDF資料にある様式4の「領収証兼明細書」です。
患者の求めに応じて1ヶ月単位でまとめて交付する場合に使用します。
※ただし、2024年10月の厚生労働省の改正では「レセコンの有無」のみが要件となり、常勤職員要件は撤廃されるケースもあります。最新の通知を必ず確認してください。
整骨院におけるキャッシュレス決済時の領収書発行
最近はキャッシュレス決済も増えてきていますが、整骨院においても領収書発行は現金払いと同じように義務です。
クレジットカードやデビットカード、電子マネー、QRコード決済などいずれの方法でも、決済事業者が発行する利用明細だけでは保険施術と自費施術の区分がわからないため、院側で必ず領収書を交付しなければなりません。
とくにQRコード決済では、患者さんのスマホに表示されるのは支払金額だけなので、整骨院が施術内容や金額の内訳を記載した領収書を発行することが必須です。
患者さんから「領収書は不要」と言われた場合でも、院側はカルテに「領収書不要」の意思表示を記録し、発行しない運用を明示しておくとトラブルを防げます。
整骨院の領収書再発行と領収証明書
万が一、患者さんが領収書を紛失してしまった場合でも、原則として同じ領収書の再発行はできません。再発行すると二重計上や経費の水増し請求に使われるおそれがあるためです。
代わりに発行できるのが「領収証明書」です。領収証明書には、以下を記載し、領収書と同様の法的効力を持たせた書類として扱います。
- 発行日(証明日)
- 患者氏名
- 支払金額
- 支払日
- 発行者名(施術所名)
再発行依頼があった場合は、患者さんに領収書の再発行ができない理由を説明したうえで、速やかに領収証明書を交付しましょう。これにより、患者さんの医療費控除などの手続きもスムーズに進められます。
整骨院の領収書に関するよくある質問
以下では、整骨院の領収書に関するよくある質問と回答をご紹介します。疑問があればチェックしてみてくださいね。
Q1.整骨院の領収書は医療費控除で使えますか?
領収書は医療費控除で使えます。確定申告の際に、整骨院でかかった費用を申告するときは領収書を添付する必要があるため、大切に保管しておきましょう。
Q2.整骨院の領収書のまとめ発行を求められたら?
患者さんからまとめ発行を依頼された場合は、一人ひとりの施術日ごとの金額を明記した上で発行しましょう。院側の都合でまとめて発行するのはおすすめできませんが、患者さんの利便性を考えると同意を得て対応すると信頼感が高まります。
Q3.領収書テンプレートの入手先は?
厚生労働省のホームページで公開されている標準様式をダウンロードして利用するのがおすすめです。自作する場合は必要項目をもれなく記載できるようにチェックリストを活用しましょう。
Q4.明細書だけほしいと言われたら?
明細書発行義務の対象外の整骨院でも、患者さんの要望があれば無償交付することができます。必要であれば領収書兼明細書として1枚で発行する方法もあるので対応を検討してみてください。
整骨院の開業支援ならジョイパルにご相談ください
- 整骨院の開業には、柔道整復師の資格取得はもちろん、実務経験や施術管理者研修の修了など、さまざまな制度要件をクリアする必要があります。
- また保健所への開設届や各種書類提出、内装工事・設備準備、事業計画書の策定など、やるべきことが多岐にわたります。初日をスムーズに迎えるためには、電話回線や予約システムの動作確認、スタッフ配置の最終チェック、来院導線のシミュレーション、キャンペーン資料の準備なども欠かせません。
- 「プレオープン」で関係者向けに一度運営テストをする方法もおすすめです。開業はスタート地点。制度理解や書類管理、集客の仕組みづくりなど、日々の改善が大切です。
- 不安な点は専門家の力を借りて、スムーズに準備を進めましょう。ジョイパルでは、整骨院開業をワンストップでサポートしています。
こんな方におすすめ
- 立地選びや商圏分析のポイントがわからない
- 物件探しから内装プランまで一貫して任せたい
- 事業計画書作成や融資支援(日本政策金融公庫など)に不安がある
- 広告やチラシ、ホームページで集客体制を整えたい
- スタッフ採用やオペレーション設計を手厚くサポートしてほしい