公開日:2025年12月03日
「接骨院は廃業率が高い」「95%が廃業するらしい」
そんな情報を目にして、開業を迷っている方は多いのではないでしょうか。
確かに、接骨院・整骨院の業界には厳しい現実もあります。
しかし、ネット上で語られている数字の中には根拠が曖昧なものもあるといえるでしょう。
そこで本記事では、接骨院・整骨院の開業支援実績1,700件以上のジョイパルが、信頼できるデータをもとに廃業率の実態を丁寧に解説します。
また、実際に廃業に至る多くのケースでは、開業時の準備不足や戦略の欠如が原因であり、適切な計画と運営ノウハウを押さえれば、開業後の経営を安定させることは十分可能です。
記事の後半では、廃業リスクを下げるための具体的な対策や成功のポイントも紹介します。
なお、接骨院・整骨院の開業の流れについて知りたい方は、開業準備について網羅的にまとめた「整骨院開業の流れ・必要な準備は?整骨院を開業するための資格・費用・手続きをわかりやすく解説」の記事をぜひ参考にしてください。
整骨院開業の流れ・必要な準備は?整骨院を開業するための資格・費用・手続きをわかりやすく解説
「整骨院を開業したいけど、何から始めればいいのかわからない」 「資格や費用、手続きの流れを知りたいけど、調べても難しくて不安…」 整骨院の開業には、資格・物件・資金・届出など…
整骨院、接骨院の開業支援ならジョイパル
接骨院・整骨院の廃業率は?「廃業ラッシュ」と言われる業界の実態

近年、接骨院・整骨院を取り巻く経営環境は厳しさを増しており「廃業が増えている」という声も多く聞かれます。では、実際のデータはどうなっているのでしょうか。
正確な「廃業率」のデータはないが倒産件数は上昇傾向
接骨院・整骨院(柔道整復師による施術施設)だけに絞った正確な「廃業率」を示す公的データは存在しません。ネットで見かける「95%が廃業」などといった数字は出典が不明確で、公的統計では確認できません。
とはいえ、接骨院・整骨院をとりまく業界の競争環境が厳しいのは事実です。
東京商工リサーチの調査では「マッサージ業(接骨院や鍼灸院、リラクゼーション店等)」の倒産件数が増加傾向にあり、2025年上半期には過去最多の55件となりました。
別の帝国データバンクの調査でも、接骨院・整骨院等の倒産件数は年々上昇傾向にあると示されており、経営体力が弱い院は淘汰されやすくなっていることがわかります。

引用元:帝国データバンク|2018 年度の収入高合計は 2000 億円を突破 ~店舗数増加で競合激化、倒産件数は 2000 年以降で最多~
参考:東京商工リサーチ||2025年1-6月の「マッサージ業」倒産55件 20年間で最多、熾烈な競争で値上げも限界 | TSRデータインサイト
危険なのは開業後3~5年?生存率の目安
接骨院・整骨院業界では「開業後3年で半数が廃業する」と語られることがありますが、これは実際のデータとは異なります。
中小企業庁の『中小企業白書2023年版』では、日本の起業者の5年後生存率は80.7%と示されており「半数がすぐに潰れる」という噂は誇張されたものと言えます。
ただし、開業後3〜5年目が経営の難所であることは事実です。
「創業融資の返済は本格化する」「開業直後の集客ブーストが落ち着く」といった要因が重なり、廃業までは至らなくても経営が不安定になりやすい時期です。「即廃業」はしなくとも、この時期を乗り越えられるだけの体力をつけておくことが重要です。
倒産だけではない「隠れ廃業」のリスク
一般に語られる「接骨院・整骨院の廃業率」は、倒産件数だけでは実態をつかめません。
「倒産」は法的整理を行った事業のみで、実際の廃業(休廃業や自主閉院)を反映していないからです。
中小企業白書(2025年版)では、全国の休廃業・解散企業数が約7万件とされ、倒産の約7倍に上ります。これは「数字に出ない廃業率」が非常に高いことを示しています。
接骨院・整骨院業界でも同じ傾向がみられ「借金返済後に自主的に閉院する」、「経営が続けられず勤務柔整師へ戻る」などのケースは「倒産」に含まれず、統計上の廃業率を押し上げています。
そのため、表面的な倒産件数だけを見て「廃業率は低い」と判断するのは危険です。
実際には、統計に現れない撤退が多く、接骨院・整骨院の廃業率は数値以上に高く見ておく必要があるといえるでしょう。
参考:中小企業庁|2025年版 中小企業白書(HTML版) 第8節 開業、倒産・休廃業
なぜ潰れる?接骨院・整骨院が廃業する4大原因
ここからは、接骨院・整骨院が廃業につながる主な原因を紹介します。
【供給過多】コンビニに迫る店舗数による競争激化
厚生労働省の『令和6年度 衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況』によれば、全国の柔道整復の施術所数は 50,924 か所(令和4年末時点)です。

引用元:厚生労働省|令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況 p.8
一方、一般社団法人 日本フランチャイズチェーン協会の「コンビニエンスストア統計」によると、コンビニ店舗数は55,962店舗(2025年10月現在)とされています。
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数 |
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接骨院・整骨院(柔道整復施術所)など |
50,924 |
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コンビニエンスストア |
55,962 |
つまり接骨院・整骨院の数はコンビニ店舗数に迫る勢いで、人口減少・市場飽和の中で競争が極めて激しい状況であることは明らかです。
近所だから利用される時代は終わりつつあり、選ばれるための差別化・集客戦略がない院は淘汰されやすくなっています。
【制度の壁】療養費(保険請求)審査の厳格化
接骨院・整骨院経営では、これまで健康保険による療養費が大きな収入源でした。しかし近年、国の方針により保険請求の審査が大幅に厳格化されています。
本来、柔道整復師が保険を使えるのは「外傷性の骨折・脱臼・打撲・捻挫」に限られますが、以前は慢性的な肩こりや腰痛にも保険を適用するグレーな運用が行われていました。
現在は厚生労働省や地方厚生局のチェックが強まり、こうした請求はほぼ通りません。
その結果、保険収入に依存していた院では返戻や指導のリスクが増加し、保険だけで利益を確保することが難しくなっています。
この変化に対応できず、売上が急減して経営が立ち行かなくなる院も増えているのです。
【経営力不足】「腕が良ければ流行る」という誤解
接骨院・整骨院が廃業する大きな原因は、技術不足ではなく「経営力の不足」にあります。
職人気質の柔道整復師ほど「技術が高ければ来院者は自然と増える」と考えがちですが、どれほど腕が良くても、知ってもらわなければ来院にはつながりません。
現在の飽和市場で必要なのは、治療技術に加えて 集客・会計・マーケティング・マネジメントといった経営スキルです。
数字が苦手なまま、集客の仕組みもない状態で開業することは、武器を持たずに戦うようなもの。技術があっても資金繰りができず、廃業に至るケースが多いのが現実です。
【資金・人材】キャッシュフロー悪化と採用難
資金繰りの失敗と、深刻な人材不足が廃業率を高める大きな要因です。中でも「スタッフが採用できない」という課題が最近際立っています。
たとえば、令和6年度の就業柔道整復師数は78,666人と過去最多を記録し、有効求人倍率が高いことから人材市場は売り手優位になっています。
開業後、スタッフを確保できず院長一人がすべての業務を担い続けると過労を引き起こし、円滑な運営は困難です。
また、採用コスト(求人広告費・紹介料)で利益を圧迫するケースも少なくありません。
資金力に余裕がないと、こうした負荷であっという間にキャッシュフローが悪化し、廃業に傾きやすいのです。
参考:厚生労働省|令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況 p.8
明日は我が身…よくある接骨院・整骨院の廃業事例パターン

次に、実際に廃業へ追い込まれた院でよく見られる失敗パターンを3つ紹介します。多くの院が陥りやすい典型的なケースです。
事例1:立地選びを誤る
① 認知されづらい悪立地を選んでしまう
家賃を抑える目的で人通りの少ない路地裏や駅から離れた場所を選ぶと、通行量が少なく認知されにくいため自然な集客が期待できません。
開業直後は広告費にも余裕がないため認知拡大が進まず、固定費だけが負担となり、損益分岐点に届く前に資金が尽きるリスクが高くなります。
② ターゲット層の生活動線と合わない場所を選んでしまう
ビジネスパーソンを想定しているのにオフィス街から外れた場所に開業するなど、ターゲット層と生活動線が合わないと利用されません。
認知されても通いにくいため継続利用につながらず、来院数が想定より伸びずに資金計画が崩れる原因になります。
開業場所・立地の選定ポイントについては「接骨院・整骨院の開業場所や立地・物件選びのポイントをわかりやすく解説!」の記事でも詳しく解説していますので、参考にしてください。
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整骨院、接骨院の開業支援ならジョイパル事例2:保険依存からの脱却に失敗しジリ貧に
開業直後「まずは人を集めたい」と保険診療を中心に集客するケースは少なくありません。
窓口負担が安いため来院者は増えますが「安い接骨院・整骨院」として定着してしまうと、高単価の自費メニューへ移行することが難しくなります。「急に料金が高くなるのか」という反発で客離れが起きやすいためです。
一方、保険診療を続けても審査は年々厳しく、客単価は上がりません。結果として、長時間働いても利益が残らないジリ貧状態に陥り、体力的・経営的に限界を迎えて閉院を選ぶケースが目立ちます。
事例3:過大な初期投資で運転資金がショートする
理想の接骨院・整骨院にしようと内装にこだわりすぎたり、高額な治療機器を複数導入したりして、開業資金を使い切ってしまうケースはよくあります。
しかし、経営で最も重要なのは「手元の現金(キャッシュ)」です。初期投資に予算をかけすぎると、開業後に必要となる運転資金が残りません。
開業直後は売上が予定どおりに立たないことも多く、初月から家賃やリース料の支払いが重荷になります。
本来は数ヶ月間の立ち上がりに耐える資金が必要ですが、運転資金が確保できていないために早期で資金ショートを起こし、廃業に追い込まれてしまうのです。
開業後の資金繰りについては、具体的な金額を示しながら解説をしているジョイパルの動画が参考になります。
開業支援のプロが資金の考え方や注意点をわかりやすく丁寧に説明しているため、初めての方でも理解しやすい内容です。
開業準備の進め方を知りたい方は、ぜひチェックしてみてください。
廃業率の高さに負けない!接骨院・整骨院が生き残るための5つの対策法

ここからは、実際に接骨院・整骨院が生き残るために欠かせない具体的な対策を5つ紹介します。どれも今日から準備できる重要なポイントです。
対策1:徹底的な「商圏調査」で勝てる立地選択
立地は接骨院経営の成否を大きく左右します。勘や不動産会社のすすめだけで決めるのではなく、必ずデータに基づく「商圏調査」を行いましょう。
【商圏調査のステップ(立地判断のためのチェックリスト)】
STEP1:エリアの基礎情報を把握する
- 開業予定地の半径500m〜1km圏内の人口
- 年齢層・世帯構成(高齢者が多い・ファミリー層が多い など)
- 昼間人口・夜間人口の違い
STEP2:競合状況を調べる
- 接骨院・整骨院・整体院・リラクゼーション店などの数
- 各院のメニュー内容(保険・自費)
- 価格帯
- Googleマップ・口コミ評価の傾向
STEP3:現地を歩いて導線・視認性を確認する
- 主要な通りの人通り(時間帯別にチェック)
- 駅・バス停・スーパーなどの生活導線との位置関係
- 看板の見えやすさ・目に留まりやすさ
- 店前の入りやすさ(入り口の広さ・雰囲気など)
STEP4:ターゲットとの相性を判断する
- 自院の想定顧客が多いエリアか
- 競合と差別化できるポイントがあるか
対策2:自費移行を前提とした「コンセプト設計・差別化」
保険収入に頼れない今、自費診療を軸にした経営が前提になります。
そのためには「何でも診ます」という曖昧な形ではなく、誰のどんな悩みを解決する院なのかを明確にすることが重要です。
たとえば
- 産後骨盤矯正の専門院
- スポーツ障害の早期回復専門
- 慢性腰痛を改善する深層筋アプローチ
などターゲットを絞ったコンセプトが有効です。
「他ではなく、この院を選ぶ理由」を作ることが差別化の核心です。専門性を示すほど、自費でも価値を感じる来院者が集まりやすくなります。
開業前からコンセプトを固め、それに沿ったメニュー設計を進めていきましょう。
対策3:Web・SNSを活用した「集客の仕組み化」
今や「待つだけの集客」では来院につながりません。チラシや看板に加えて、WebやSNSを使った仕組み化した集客が必須です。
来院者の多くは事前にスマホ検索を行うため、スマートフォンに最適化されたホームページの整備は基本です。
また、地域で集客する接骨院・整骨院には、Googleマップで上位表示を狙う MEO対策(Googleビジネスプロフィールの運用)は特に効果的。マップ上で上位に出るだけで、近隣住民の来院候補に入りやすくなります。
さらに、InstagramやLINEで院の雰囲気や施術内容を継続発信し、認知から予約までの流れをオンライン上に作ることで、安定した集客につながります。
一方、ターゲット層がSNSになじみのない世代である場合、チラシによる集客も有効です。「整骨院のチラシ作成に使える無料テンプレートと注意すべき広告規制」の記事をご覧ください。
整骨院のチラシ作成に使える無料テンプレートと注意すべき広告規制
整骨院の集客といえば、今はホームページやSNSが中心と思われがちです。しかし、地域に根ざした整骨院では「チラシ」もいまだに有効な集客手段のひとつです。特に中高年層の方はインタ…
整骨院、接骨院の開業支援ならジョイパル対策4:余裕を持った「資金計画」と数値管理
資金が尽きれば、どれほど良い施術ができても院は続けられません。
開業後数ヶ月は赤字を想定し、余裕のある資金計画を立てましょう。理想は、売上ゼロでも家賃・生活費を払える運転資金を半年〜1年分確保すること。
足りない場合は、日本政策金融公庫などの創業融資を活用して手元資金を厚くしておくことが重要です。
開業後は「どんぶり勘定」をやめ、売上・経費・来院数・客単価などを日々数字で把握します。
数値が見えていれば、早めの集客施策や改善策が打てるため、経営の安定につながります。
接骨院・整骨院の開業費用に関する情報は「接骨院・整骨院開業費用は最低いくら必要?資金ゼロ・開業費用を抑えるポイント」をご覧ください。開業にまつわる各項目の具体的な金額相場や資金調達方法について紹介しています。
接骨院・整骨院開業費用は最低いくら必要?資金ゼロ・開業費用を抑えるポイント
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新規集客も重要ですが、経営を安定させる鍵はリピーターの存在です。来院を続けてもらえるかどうかは、技術だけでなく「院での体験」や「先生の対応」に大きく左右されます。
来院者の話を丁寧に聞く傾聴力、原因や改善方法を分かりやすく伝える説明力、安心して過ごせる接客力を徹底することで、信頼関係が生まれます。
「この先生なら任せられる」と感じてもらえれば通院が継続し、紹介にもつながります。ファンを増やすコミュニケーション力こそ、廃業を防ぐ大きな武器になります。
接骨院・整骨院で心地よい体験を提供するには、開業時に内装やレイアウトにもこだわる必要があります。
詳しく知りたい方は「整骨院・接骨院の内装をおしゃれにするには?レイアウト事例も紹介」の記事をご覧ください。
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接骨院・整骨院の廃業率は噂ほど高くありませんが、実際には倒産に含まれない「隠れ廃業」も多く、油断はできないことをお伝えしてきました。
ターゲットに合う立地選定、資金計画、保険依存からの脱却、集客など、開業には多くの専門的な判断が必要となり、施術に専念してきた柔道整復師が一人で対応するのは非常に難しいのが現実です。
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