2025年10月02日
整骨院を開業するとき、もっとも悩むのが「どこで開業するか」という場所選びです。
駅前・商店街・住宅街など、立地によって集まる患者の層や収益モデルは大きく変わります。さらに、物件の条件や賃料比率、商圏分析の有無も、経営の安定性に直結します。
本記事では、整骨院・接骨院の開業場所を決めるときに押さえておきたいポイントを、わかりやすく整理しました。避けるべき立地や物件チェックリストも紹介していますので、これから開業を考えている方はぜひ参考にしてください。
整骨院の開業場所を決める前に考えること
整骨院の開業では「どの場所でやるか」が大きな分かれ道になります。ただし、物件探しに飛びつく前に考えておきたいポイントがいくつかあります。
ここでは、整骨院の立地を決める前に整理しておきたい6つの視点を紹介します。
① 立地・コンセプト・採算のバランスを取る
整骨院の経営は、立地・コンセプト・採算の3つが揃ってこそ安定します。
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立地:駅前、商店街、住宅街など、集客ポテンシャルをどう活かすか
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コンセプト:保険中心か、自費中心か、スポーツや美容に強いのか
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採算:家賃や固定費が売上計画に見合っているか
どれか一つだけに偏ると経営が不安定になりやすいため、この三角バランスを意識して開業場所を検討しましょう。
② ターゲットとサービス内容を先に決める
物件探しを始める前に「誰に・何を・いくらで」提供するのかを明確にしましょう。
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誰に:高齢者、学生、会社員、子育て世帯など
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何を:保険施術、自費メニュー、外傷対応、美容整体など
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いくらで:単価や通院回数、回数券・コースの設計
ターゲットとサービスが決まれば、「駅前がいいのか住宅街がいいのか」など、整骨院に最適な立地も自然に絞れてきます。
③ 立地が不利でも設計で補う方法を考える
理想の場所が取れなくても、工夫次第で十分に戦えます。
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2階以上や奥まった場所 → 予約制+高単価メニューで客単価を上げる
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住宅街の路地 → 定期通院や紹介制度でリピートを増やす
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競合が多い通り → 専門メニューを打ち出して差別化する
「立地が悪い=失敗」ではありません。施術設計や集客動線で弱点を補うことが可能です。
④ 商圏調査の基本を押さえる
難しい調査は不要ですが、最低限のチェックは欠かせません。
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人口構成:高齢者が多いか、若い世帯が多いか
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昼夜間人口:昼は働く人が集まるか、夜は住民が戻るか
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競合状況:近隣に何院あり、それぞれどんな特徴か
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導線:駅、バス停、スーパー、駐車場など人や車の流れ
この4点を見れば、整骨院のターゲットと街の動きが合っているかを判断できます。
⑤ コンセプト別に合う立地を選ぶ
整骨院の立地は、コンセプトに合う場所を選ぶことが大切です。
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保険中心 → 高齢者が多い住宅街や集合住宅
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自費中心 → 駅前や商店街などアクセスの良い場所
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スポーツ外傷専門 → 学校や運動施設の近く
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美容・姿勢改善 → 若い女性が集まる商業施設や人通りの多いエリア
「うちは〇〇に強い整骨院です」と一言で言えるくらい、コンセプトと立地を一致させましょう。
⑥ 数字を使って赤字リスクを避ける
感覚だけで場所を決めると失敗のもとです。数字で冷静に確認しましょう。
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家賃比率:売上の8〜12%程度が理想
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必要来院数:1日あたり最低何人来れば黒字になるか
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広告費:目立ちにくい場所なら多めに見込む
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余裕枠:季節変動や修繕費をあらかじめ計算に入れる
数字の裏付けをとることで、「安いけど集客できない」「立地は良いけど赤字」という失敗を防げます。
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整骨院を開業する際の立地別での経営戦略
整骨院を新しく開業する場合は、需要のありそうな場所で競合が少ない場所で開業したいと考える人は多いでしょう。
実際に「はり師・きゅう師の施術所」「柔道整復師の施術所」の施術所数は年々増えており、開業場所も重要ですが、開業場所別での集客戦略も非常に重要です。
出典:日本政策金融公庫|はり師・きゅう師・柔道整復師の施術所の創業ポイント
「人通りが多いから良い」「家賃が安いから安心」といった単純な理由ではなく、立地ごとの特性に合わせた戦略を立てることが大切です。
①駅前(遠方集客・自費強化・高賃料への対策)
駅前は、多くの人が集まるため遠方からの集客にもつながります。しかし、賃料が高く競合も多いため、戦略的に活用する必要があります。
- メリット:知名度アップが早い/幅広い層の集患が可能
- デメリット:家賃が高い/競合が集中しやすい
- 戦略:自費施術を強化し、高単価でも通う価値を提供する
駅前は「保険メイン」よりも「自費メイン」で戦う方が採算を取りやすい立地です。
②商店街・商業施設(家族同伴・回遊性・イベント連動)
買い物ついでに立ち寄れるのが強みで、幅広い年齢層にアプローチできます。
- メリット:主婦や高齢者、家族での通院が見込める
- デメリット:大型商業施設は賃料が高め/小規模商店街は競合が増えやすい
- 戦略:地域イベントやキャンペーンと連動して集客を強化
商店街は「地域密着型」で長く続けたい整骨院に向いています。
③オフィス街(昼休み・退勤後・短時間メニュー設計)
働く人をターゲットにできるのがオフィス街です。
- メリット:昼休みや仕事帰りに来院しやすい/自費施術の需要が高め
- デメリット:土日や夜遅い時間は集客が落ちやすい
- 戦略:15〜30分の短時間メニューや予約制で効率化
オフィス街は「回転率の高さ」と「利便性」が勝負ポイントです。
④住宅街(高齢者比率・紹介・定期通院の組み立て)
地域住民と長期的に関係を築けるのが住宅街の強みです。
- メリット:高齢者のリピートが期待できる/家賃を抑えられる
- デメリット:広域からの集客は難しい/広告や紹介が必要
- 戦略:紹介制度や回数券を導入し、リピートを安定させる
住宅街では「1人あたりの継続率」が経営の安定に直結します。
⑤ロードサイド(駐車・大型看板・右折進入対策)
一見すると交通量が多く有利に思えますが、実際には来院につながりにくいケースもあり、注意が必要です。
- メリット:遠方からも車で来院しやすい/大型看板での訴求効果が大きい
- デメリット:車の流れが速いと気づかれにくい/駐車場の配置が重要
- 戦略:駐車場の導線を整え、看板を目立たせる
ロードサイド型は「車で行きやすいかどうか」が集患の決め手になります。
⑥集合住宅内・医療モール(高齢者比率・保険中心)
マンションの1階や医療モール内に開業するパターンです。
- メリット:高齢者が中心で安定した来院が見込める/医療機関との相乗効果も期待できる
- デメリット:自費施術の比率が低くなりやすい
- 戦略:保険施術を軸にしつつ、紹介や口コミで広げる
医療モール内なら「安心感」が強みになります。
⑦通学路・スポーツ施設周辺(外傷・部活提携)
スポーツ外傷や成長期のケアに特化するなら、この立地が有効です。
- メリット:学生やスポーツ選手をターゲットにできる/外傷治療で強みを発揮できる
- デメリット:シーズンや学期ごとに患者数が変動する
- 戦略:学校やクラブと提携し、定期的なケアを提供する
スポーツ系に特化した整骨院なら、口コミや紹介で信頼を広げやすい立地です。
整骨院の開業を避けたい4つの場所
「人通りが多い」「賃料が安い」といった表面的な条件だけで場所を選んでしまうと、集客が難しくなることがあります。
整骨院にとって相性の悪い立地は存在しますので、事前に把握しておくことが重要です。
①日照・視界が遮られる区画(清潔感・安心感に影響)
患者は院の外観から安心感を得ることが多いため、立地の見え方は非常に重要です。
- 問題点:日当たりが悪い、植栽や建物で外観が隠れる
- リスク:暗く不安な印象を与え、初めての来院をためらわせる
「清潔そう」「入りやすそう」という印象を損なう立地は避けるのが無難です。
②騒音・振動が大きい環境(施術満足度の低下)
整骨院は「落ち着いて施術を受けられる空間」であることが求められます。
- 問題点:大通り沿いや鉄道高架下などで騒音・振動が響く
- リスク:リラックスできず、施術の満足度やリピート率が下がる
環境が快適でなければ、どれだけ技術が優れていても通院は長続きしにくいです。
③高層階・視認困難フロア(看板条件・エレベーター動線)
駅前でも、階数が高いと視認性が下がり集客には不利です。
- 問題点:人の視線は上下45度程度、3階以上は目に入りにくい
- リスク:看板を設置しても認知されにくく、飛び込み来院が期待できない
上層階の物件を選ぶ場合は、予約制やオンライン集客で補う必要があります。
④競合過密で差別化困難なミクロ立地(同質化のリスク)
人口が多いエリアでも、同業者が集中しすぎている場所は避けた方が賢明です。
- 問題点:価格競争に巻き込まれる可能性が高い
- リスク:差別化が不十分だと埋もれてしまい、集客が伸びない
同じコンセプトの整骨院がひしめくエリアでは、独自性を打ち出せない限り厳しい戦いになります。
整骨院の物件選びに活用したい6つのチェックリスト
立地が良くても、物件の条件が整っていなければ経営はスムーズに進みません。
内装工事や設備の可否、契約条件などを事前に確認しておくことで、後のトラブルを防ぐことができます。
ここでは、整骨院の物件探しで必ずチェックすべきポイントを整理します。
①居抜き/スケルトンの向き不向き
物件が「居抜き」か「スケルトン」かで、開業準備のコストとスピードは大きく変わります。
- 居抜き物件:前の店舗の内装や設備を活かせるため、初期費用が抑えられる
- スケルトン物件:自由度は高いが、工事費用と時間がかかる
- 選び方の目安:費用を抑えたいなら居抜き、こだわった設計ならスケルトン
いずれの場合も、既存設備の状態や配管位置は必ず確認しましょう。
②間口・天井高・柱位置・動線の確認
患者が通いやすく、院内が使いやすいかどうかは物件の構造に左右されます。
- 間口:外から院内が見えやすく、入りやすい雰囲気か
- 天井高:圧迫感なく施術できる高さか
- 柱位置:ベッドや待合スペースの配置を妨げないか
- 動線:受付から施術室、トイレまでスムーズにつながっているか
物件を見学するときは、自分が患者になったつもりで動線を確認するのがおすすめです。
③電気容量・給排水・空調・防音
設備の条件が整っていないと、追加工事で予算オーバーになりかねません。
- 電気容量:医療機器や照明を使用してもブレーカーが落ちないか
- 給排水:洗面や手洗いの設置が可能か
- 空調:夏冬でも快適に施術できるか
- 防音:周囲の騒音が入りにくく、院内の声も漏れにくいか
特に給排水や空調は、後から改善すると高額になりやすいポイントです。
④看板掲出可否・サイズ・共用部ルール
患者に認知してもらうには、看板の設置条件を事前に確認することが必須です。
- 設置可否:管理規約で看板の掲出が許可されているか
- サイズ:十分な大きさで設置できるか
- 共用部ルール:ビルやテナントのエントランスに案内サインを出せるか
看板の制限が厳しいと、集患力に大きく影響します。
⑤駐車場・駐輪場・ベビーカー導線
患者が通いやすい環境かどうかを判断するうえで重要なポイントです。
- 駐車場:台数は十分か、出入りがしやすいか
- 駐輪場:自転車が停めやすく安全に利用できるか
- ベビーカー導線:段差やスロープがあり、子連れでも入りやすいか
郊外型の整骨院では駐車場の有無が、都市部では駐輪場やスロープの有無が大きな差になります。
⑥賃料・保証金・更新料・原状回復条件
最後に、契約条件を冷静に確認することも欠かせません。
- 賃料:売上の8〜12%以内に収まるか
- 保証金:返還条件は明確か
- 更新料:何年ごとに発生するか
- 原状回復:退去時に大きな負担がないか
経営シミュレーションと照らし合わせて、リスクの少ない契約条件を選ぶことが大切です。
関連記事:整骨院・接骨院の内装をおしゃれにするには?レイアウト事例も紹介
整骨院の開業場所に困っているならまずはジョイパルにご相談ください
整骨院の開業は「資格を持っていればすぐにできる」というものではありません。
柔道整復師としての免許だけでなく、実務経験や施術管理者研修の修了、そして保健所への開設届など、制度面での準備が必須です。
さらに、物件の選定・内装工事・資金計画・広告戦略など、多くの工程を並行して進める必要があります。
特に開業直前には、次のような確認をしておくと安心です。
- 電話や予約システムなどの設備が正常に動作しているか
- 入口から受付・施術室までの導線に不便がないか
- 内装や看板が「清潔感・安心感」を与えられているか
- 限定キャンペーンや広告ツールが準備できているか
また、患者に信頼される整骨院をつくるためには、日々の改善と運営の工夫が欠かせません。ジョイパルでは、以下のようなサポートを行っています。
- 商圏分析や立地選びのアドバイス
- 物件紹介や内装プランの提案
- 開業資金計画の立案・調達サポート
- チラシ・ホームページなどの集客支援
- 採用やオペレーション体制づくりの支援
「自分に合った場所で、安定して経営できる整骨院を開業したい」そんな方は、ぜひジョイパルにご相談ください!
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